わたしを離さないで
カズオ・イシグロのベストセラー小説。
彼は長崎生まれ、英国育ち。
本書は英語の翻訳版となる。
この本を知ったのは、テレビ東京WBSのスミスの本棚。
各界の著名人が、自分の好きな本を紹介するというコーナー。
ここで自分そっくりのロボットを作って有名になった大阪大学工学研究科教授
ATR知能ロボティクス研究所客員室長
石黒浩氏だ。
テレビでその本の内容を知ってしまったので、ネタバレで読み始めたのだが、
それでつまらないというほど、陳腐な作品ではない。
全寮制の施設ヘールシャムでの、若者たちの生活。
他愛ない会話、恋愛、友情、思春期、、どこか奇妙な日々。
毎週の健康診断。
保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度。
図画工作に異様なまでに執着して取組む生徒たち。
ヘールシャム出身で、優秀な介護人キャシーが、回想する
ヘールシャムの不可思議で残酷な真実とは、、。
*ここからはネタバレとなります
ヘールシャムの子供たちは、将来、提供者となる人間である。
またある者は、提供者の介護を担当する介護人となる。
彼らには、親もいないし、兄弟もいない。
セックスしても子供もできない。
外部の世界との接触は、施設を出るまでは一切行っていけない。
4回の提供を終えると、人生も終わってしまう。
子供の頃のキャシーは、或る日遅くまで音楽教室に残っていた。
すでに授業は終わり、宿舎へ帰っていなければならない時だ。
彼女はお気に入りの人形を、まるで自らの子供のように抱きしめて、
ダンスをするように、ゆっくりと歌っていた。
Oh baby baby
Never let me go...
偶然教室の前を通りかかった保護官は、彼女を注意することもなく
ただじっと見つめ、涙を流していた。
その涙は、子供を産めないキャシーに同情して
流していたわけではなかった。
学校に定期的に訪問して、生徒たちの図画工作の優れた作品を
ひきとっていた謎の婦人。
キャシーは大人になってから、婦人と会うことにした。
婦人は、何故生徒たちの作品を持ち帰っていたのかを
話してくれた。
それはヘールシャムのスポンサーとなる企業などへの
献金を提供してもらうため、あるいは世間から表にだる事が無い施設の
扱いについて世論を動かそうとしていたのだった。
それもヘールシャムが閉鎖された今となっては、そのすべてが
無駄に終わったとも言える。
IPS細胞によって、近い将来自分の臓器のコピーを作って
保管するようなサービスが生まれるかもしれない。
自分のコピー、クローンを作って、育て、そして必要な時に
臓器を提供させる。
そのための施設が実は我々の知らない場所にひっそりと
存在しているのかもしれない。
クローンを作るということは、果たして善か悪か。
生命維持のためにクローンからの移植は認められるのか。
それは神の冒涜なのか、人間のエゴか。
本の表紙は、カセットテープになっている。
キャシーの一番好きな歌が録音されたカセットテープだ。
悲しい詩だ。
Oh baby baby
Never let me go...
悲しきクローンの子供たち。
本作品は、2010年映画化されている。
アーティスト:キャリー・マリガン/アンドリュー・ガーフィールド/キーラ・ナイトレイ ほか
出演:キャリー・マリガン/アンドリュー・ガーフィールド/キーラ・ナイトレイほか
監督:マーク・ロマネク
脚本:アレックス・ガーランド
原作:カズオ・イシグロ
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